
舞い上がる砂塵のように
ASIA
肌を刺すような放射状の熱波の中
空腹を感じて街を彷徨っていると
盲目の老人が近づいてきた。
片言の英語で彼は言う。
「お前は外国人だろう?少しの銭を私に分けてくれないか?いいだろう?」
背を向けた俺の耳に老人の弱々しい響きが繰り返された。
「何故行ってしまうのかね。・・・何故行ってしまうのかね。・・・何故・・・」
ASIA
夜のメインストリート
足の踏み場にも気を使う雑踏の中
ふと前方を見ると、それまでの混雑がまるで嘘のように視界が拓けた。
そして、その一見「奇妙」とも思える空間の下に目をやると
両脚を失った中高年の男が地面に這い蹲っているではないか。
口には「生き抜く為の銭の寄付を煽る缶殻」を銜え
唯一の両腕・指先は着実に地面を捉え、その力だけで這いずり前進していた。
彼は物言わずして意思表示していたのだ。
「どうだ?俺はこんな姿さ。
両脚が無いとこの国じゃどれだけ生きていくのが大変か、お前ら解るか?
この缶殻に金を入れてくれ!俺は生きてやる!生きてやるんだ。畜生!!」
ASIA
海外からの観光客集う遺跡群の中
人も疎らになったその奥地で
日射しを避けるように 静かな物陰の地べたに彼女は座っていた。
年の頃10歳前後だろうか
ボサボサの髪 そして 汚れきったボロボロの服 彼女は目を伏せ視点は常に地面だった。
俺は全く金を要求しないこの子に 金をやることにした。
同じく地面に置かれたコップのような物に小銭を置くと
彼女は地鳴りのするような低い声で弱々しく言った。
「ありがとう」
そして合掌した ・・・(両腕の上腕部が無い)・・・
彼女は「見えない手」を必死に合わせ合掌していたのだ。
俺はその場に座り込んでしまった。そして目で話した。
「ちゃんと物食えるか?痛いところないか?誰か良い人を頼りに逞しく生きるんだぞ。」
俺の心と躰は引き裂かれ 舞い上がる砂塵のように宙を舞い
躰の細胞の一つ一つは 舞い上がる砂粒へと姿を変えた
熱風が俺を吹き飛ばし アジアの渇いた大地へ叩きつける
やがて 大地には 緑が芽生え 小さな白い花を咲かせ
少女がそれを摘み 小さな花の輪を作り 観光客へと売りさばく
ASIA
俺は忘れない。
そして俺は忘れないように、何度も何度も小さな白い花の輪の匂いを嗅いだ。